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Ⅵ.わが国での追跡研究
わが国での自閉症の最初の報告例は昭和27年の鷲見72)のものである。この年は奇しくもオランダのvan Krevelen, A. によるヨーロッパでの最初の報告のあった年である。この鷙見の症例がその後どのような経過をたどったかは若林の著書78)で知ることができる。予後調査についても比較的早期から行われており,黒丸38)は1966年の国際学会で3歳以前に発病した30例についてgood 3例,fair 5例,poor 22例と報告している。これらの症例はKannerの基準での幼児自閉症6例,Mahlerの小児共生精神病3例,その他DespertやBenderの児童分裂病17例,牧田のいう器質性疑似自閉症と心因性疑似自閉症がそれぞれ11例および3例となっており,そのうち幼児自閉症ではgood 1例,fair 2例,poor 3例となっているが,こうした区分は当時,自閉症症状を示す子どもに試みられた類型化であって,ほぼ全例を自閉症とみなして差支えない。牧田(1974)44)は海外で行われている追跡調査を紹介したあと,10年以上経過した自験例4例について,すべてが病的状態が続いており,2例は通院中,2例は在宅で通学可能の状態に達しておらず,また,比較的適応が良いが,sympathy,empathyを欠く女子中学生2例を経験しているとしているが,この年代はまだわが国では障害児全員入学の制度が本格化していないことを考慮する必要があろう。
昭和50年になると若林ら76)によって名大精神科23年間の受診者で16歳以上の年齢に達した56例のうち消息の明らかな34例(最高年齢25歳,20歳以上のもの6例)についてgood 3例,fair 6例,poor 21例,事故死4例と報告されている。なお,この研究は引き続き現在でも行われている。沢田,辻ら(1977)65)は小学校情緒障害学級の教育のあり方を検討する目的で,金沢大学医学部附属病院精神科を受診して自閉症と診断された者のうち12例を選び,中学,高校の年齢での対人関係,言語,行動,感覚,固執性の5項目について調査し,詳細な記録を記している。昭和53年には東京の堀之内小学校情緒障害学級の10年間の在級した生徒42名の予後調査の報告71)がある。同校は昭和44年にわが国最初の情緒障害学級が開設された小学校で,3名が就職,4名が高校,2名が養護学校高等部,9名が施設収容ないし病院に入院中,1名が死亡,あとは小学校,中学校に在籍となっている。また,玉井らによる国立特殊教育研究所の追跡調査73)ではgood 6,fair 7,poor 18とされている。
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