巻頭言
大人になった自閉症児を考える
中根 晃
1
1東京都立梅ヶ丘病院
pp.456-457
発行日 1993年5月15日
Published Date 1993/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903442
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昨年7月,日本自閉症協会および日本自閉症者施設連絡協議会主宰の発達障害セミナーがあり,講師として話をするよう依頼された。テーマは「理解されにくい自閉症者たち」ということだったが,世話役をされた東海大学の山崎晃資教授の示唆によると「最近,知能の高い自閉症青年の問題が深刻になってきているから」とのことであった。私たちの病院でもここ数年,比較的経過が良いと思われた自閉症児が高校生,大学生の年齢になって深刻な適応障害に陥って受診することが稀でなくなっており,私なりに青年期の自閉症の精神病理について考えてきていたので喜んでお引き受けしたが,では,どのような社会的対応があるかというと返事に窮するのが社会適応に失敗した,知能が高く,実際に高学歴を手にした成人自閉症である。また,彼らの精神医学的問題は社会的対応とは別に,今まで成人の精神医学が知らなかった独自の病理をもとに起こっているようである。
自閉症は発達障害の1型とされている。そこで,幼児期の初期には言葉の発達の遅れなどがあっても,4歳すぎにはごく普通に話しができ,友人との交流も可能になり,学校の勉強もそこそこできている彼らには,かつては自閉症と診断されたことはあっても,専門的に関与することはなくなってしまっている。しかし,高年齢になってから適応障害を起こしやすくなる青年期の自閉症を考えてわかったことは,彼らは知能が高いために,問題になる時期がずっと遅い年代になっただけではないかということである。
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