Japanese
English
展望
幼児自閉症の予後
The Prognosis of Infantile Autism
若林 慎一郎
1
Shinichiro Wakabayashi
1
1名古屋大学医学部精神医学教室
1Dept. of Psychiatry, Nagoya University School of Medicine
pp.244-260
発行日 1980年3月15日
Published Date 1980/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203070
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
1799年,パリ郊外の森で,後世,アヴェロンの野生児44)といわれた12歳くらいの野生の少年が発見された。聾唖院の医師Itardは,この少年が聾でないとすれば,なぜ喋れないのであろうか,喋ることができるようになるであろうかと考え,この少年の教育を試みた。5年間の苦心惨胆の挙句,若干の言葉の意味の理解と少数の音の発音ができるようになったに過ぎず,当初,白痴であろうといったPinelの意見が正しかったようで,Itardが予期したように喋ることができるようにはならなかったという(Itardの感覚訓練の意図と方法は,後に,Seguinの感覚および運動機能の訓練を中核とした精神薄弱児の生理学的教育へと継承発展された)。Wing107)やHermelin and O'Connor42)は,この少年は,自閉症が示すほとんどの診断的特徴をもっていたとして,自閉症だったのではないかと考えているようであるが,もしそうであったとしたら,このアヴェロンの野生児のエピソードは,今日の自閉症の予後を,2世紀近い以前に示唆した資料として興味深いものがある。
Copyright © 1980, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.