Japanese
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創刊30周年記念特集 精神医学—最近の進歩 第1部
遺伝子工学と精神医学
Genetic Engineering and Psychiatry
堺 俊明
1
,
米田 博
1
Toshiaki Sakai
1
,
Hiroshi Yoneda
1
1大阪医科大学神経精神医学教室
1Department of Neuropsychiatry, Osaka Medical College
pp.291-297
発行日 1988年3月15日
Published Date 1988/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204486
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1.はじめに
近年,分子生物学ことに遺伝子工学は急速な進展をみせ,臨床医学においても様々な影響を与えている。すなわち,DNAを直接操作することによって,従来は不可能であった出生前診断や保因者の同定が可能となり,また治療面でも遺伝子治療の可能性が論じられるようになってきた。さらに,遺伝子工学の手法を用いた医薬品の開発が盛んに行われ,一部は実際の臨床場面でも使用されるようになってきた。
精神科領域については,従来より臨床遺伝学的研究によって,いくつかの疾患の発症に遺伝要因が関与していることが明らかにされている。ことに,先天性代謝異常や変性疾患は,その遺伝形式が明らかにされているものも多い。また,精神分裂病,感情障害等についても,その遺伝形式について論議されている。しかし,発症に直接関係する病的遺伝子をとらえること,すなわちその染色体上の正確な位置や構造については,ほとんど解明されていない。そこで,Gusellaらは,DNA分析の手法を用いた遺伝子レベルでの研究を初めて行い,その結果,ハンチントン舞踏病の病的遺伝子が4番染色体上に存在することを報告した。その後,感情障害,アルツハイマー病等についても,DNA分析によって遺伝子レベルでの病因の解明が行われるようになっている。ここでは,最近相次いでDNAレベルでの研究報告がなされるようになった疾患のうち,ハンチントン舞踏病,感情障害,アルツハイマー病を取り上げ,その研究結果を紹介すると共に,これらの研究で用いられたDNA分析や連鎖研究の方法について述べる。
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