Japanese
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創刊30周年記念特集 精神医学—最近の進歩 第1部
精神保健法をめぐって—諸外国との比較
On the Revision of the Mental Health Law: As compared with other foreign countries
高臣 武史
1
Takeshi Takatomi
1
1前・国立精神・神経センター精神保健研究所
1Former, Institute of Mental Health, National Center of Neurology and Psychiatry
pp.283-290
発行日 1988年3月15日
Published Date 1988/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204485
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まえおき
昨年秋精神衛生法が改正され,精神保健法が国会で成立した。法の施行は政省令が整備される今春以降と予想されている。今回の改正については賛否両方の立場からすでに多くの人たちが意見を発表しているし,諸外国の状況についても紹介されている。私は近年外国を訪れていないし,その実情を知らないので,今回のテーマで執筆する資格がない。それでいったんは固辞したが,昭和60年度から2年間厚生省の特別研究費をうけて,精神保健研究所員ばかりでなく,各都府県の精神衛生センターや公私立病院,大学等の精神衛生学,臨床精神医学,刑法学,社会学,社会福祉学等の専門家と,法をどのように改正すべきかを学際的に討議したし,中央公衆衛生審議会精神衛生部会の一員として,今回の改正に関与したので,執筆することにした。
今回の法改正は周知のように,いくつかの精神病院入院患者に対する不祥事件が国内外からの批判を機縁として行われるようになった。したがって入院形式や患者の人権問題,社会復帰や社会福祉についての法の見直しが緊急の問題となった。またどのような治療をどのような患者に行うべきかも論じられ,法の定義も問題となった。しかし時間的な制約もあったためか,法改正は精神保健法と名をかえる程の大改正ではなく,部分改正で終ってしまった。以下それらの点について考えてみたい。
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