Japanese
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研究と報告
とらわれの精神病理についての一考察—強迫神経症の1治療例を通して
A Consideration on the Psychopathology of Neurotic Preoccupations: From experience of psychotherapy to an obsessive-compulsive patient
長山 恵一
1
Keiichi Nagayama
1
1東京慈恵会医科大学精神神経科学教室
1Department of Neurology and Psychiatry, The Jikei University School of Medicine
キーワード:
Neurotic preoccupations
,
Morita-therapy
,
Amae-theory
Keyword:
Neurotic preoccupations
,
Morita-therapy
,
Amae-theory
pp.17-25
発行日 1988年1月15日
Published Date 1988/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204449
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抄録 森田学派によって提唱された"とらわれ"の説に対する今までの諸家の批判を概観し,力動的な精神療法の観点から新たに以下の諸点を明らかにした。①森田神経質者に見られるとらわれは,患者の病的・観念的な独立欲求と依存欲求の双方が関係している。それらは共にある種の対象に異様な敏感さが見られること,奇妙な悪循環が内在すること,さらには何か他のものにしがみつくことで自らの不足感を代償しようとすることなどで共通する。両者は依存の抑圧,解放というメカニズムを介して相互に移行し得る現象である。②とらわれの発現には依存の抑圧だけでなく,患者に内在する基本的な不足感・不全感が重要な役割を果たしている。そうした不全感は患者が治療の場や自然に融合し,特異な空間的・身体的な現象が現れると同時に解消される。③森田学派で言う"自然の調節作用"と,この空間的・身体的な融合現象とは密接に係っているが,それらは患者の治療抵抗を処理した後に初めて現れてくる。
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