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I.はじめに
順天堂精神医学研究所及び附属順天堂越谷病院(以下当院)は昭和53年末で10周年を迎えた。当院は埼玉県東南部の精神病院の病床数不足という現実的要請を踏まえ,一地域精神病院としての存在意識を持ちながらも幾分異なった成立ちの歴史を持つので,まず創立の歴史的背景を簡単に述べてみる。昭和40年頃から,順天堂大学精神医学教室において精神医療の臨床的拠点,同時に精神医学の臨床的研究の実践の場を創立しようという気風が起こり,討議を重ねた末に昭和43年に当院が創立された。定床172床の単科精神病院で順天堂大学医学部精神医学教室とは密接な関係を保持し,現在に至るまで常勤医師,非常勤医師すべてが同教室員として名を連ねている。創立後数年間の入院患者の大部分は,同教室精神科外来よりの紹介患者で占められていたが,昭和48年以降は地元越谷市を中心としてその周辺の人々の入院が急速に増加して,50%近くを占めるようになった(図1,2)。当院は埼玉県越谷市にあり,創立当初は全くの田園の中であったが,東京都のベッド・タウンとしての人口急増により数年前より市街化がめざましく進展した。昭和44年より51年までの実質8年間において,延べ人員数2000名の人々が入院治療を受け退院して,家庭へ,社会へ帰って行った。これら退院者の個々の治療の経験はもとより貴重なものであったが,退院者として一括しての枠組の中で,個々の精神障害者の持つ入院から退院に至る,診断的,治療的,家族的,社会的,経済的その他の諸要因を取り上げて検討するときに,そこに当院独自の,または精神病院共通の傾向が存在するかもしれず,もしもそれらの諸要因を抽出し得たならば今後の精神医療にとって,いささかでも役立てることができるであろう。また当院10年の歩みを顧みて治療上反省と将来の発展への資とする願いもこめてわれわれは,当院退院者の実態を統計的方法をもって検討した。
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