巻頭言
思いつくことなど—再び「まちなかの臨床医」として
久山 照息
1
1湊川病院
pp.592-593
発行日 1980年6月15日
Published Date 1980/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203106
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この巻頭言に「まちなかの一精神科医として」と拙文を書いて9年になる。いわゆる70年代のはじまりであった。いまここで時代的考証をしようとは思わないし,まだまだそのころのことが80年代に入って,きっぱり分け,峻別することはできないまま続いているので,回想することもできないが,「まちなかの医者」として「日常性」を大切にしようと考えていたことを書いたと思う。もちろん,人に聞いてもらうような提言ではないと断っていた。いま再びまちなかの臨床医としての思いつきを述べるのも,前と同じである。
敢えていうならば,わたしの仕事は「ふれあい」を,なにか診察とか,相談とか,私の臨床医としての役割,それも「まちなか」の一精神病院の勤務医としての仕事の中での出会いを大切にしてゆくことである。診断ということはけっしてそうではないのに,レッテル貼りに終っている事実を現在もなお知らされている。それはたしかに精神科医の診療が忙しくて,あるいはたくさんの患者をこなさざるを得ない情況に追い込められてそうなるのか,あるいはレッテルを貼りつけて,あとは薬を飲ましておけばよいと確信しているのか,よくは分らない。
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