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I.はじめに
WHOの精神衛生部を中心に,比較的最近行なわれてきた諸活動,とくに専門委員会,研究グループ,セミナーなどについて概観してみたい。なお現在進行中のうつ病の国際研究と,これから開始される第2回精神分裂病国際研究などについては,高橋良氏が,述べることになっている。WHOの精神衛生部もDivisionになったのは最近のことで,以前はOfficeに過ぎなかった。筆者が知っているかぎりでもKrapf,Baan,Lebedev,Hasler,Sartoriusと責任者が変り,この間に専門委員会に参与したのは,村松常雄,金子仁郎,満田久敏,井上英二,和田淳などの諸氏と小生であり,セミナーには多数参加し,研究グループには新福尚武,長谷川和夫,高橋良その他の諸氏が参加している。WHOフェローシップの最初は高木四郎氏であり,岡田敬蔵氏のあと小生が行ったのは,1958年のことであった。その後精神衛生専門委員に任命され,1961年の疫学セミナーを最初に,地域精神衛生セミナーなどのあと,1965年から第9回ICDのための「精神医学的診断・分類・統計委員会」のメンバーとなり,1975年まで続いた。この間にServices for the Prevention and Treatment of Dependence on Alcohol and Other Drugs(1966年10月,報告書はNo. 363,1967)と,Uses of Epidemiology in Housing Programmes and in Planning Human Settlements(1972年9月,報告書はNo. 544,1974)に出席した。またこの間に自殺に関する調査や,精神衛生法の国際比較にも参加した。また,最近のWHOの動向として,発達途上国の問題にとくに集中していること,社会精神医学から生物精神医学への傾斜がみられることなどが目立っている。余り旧聞に属するものは避けるが,WHOの精神衛生部の研究計画を樹てるようになったのは1965年からであり,この立案者は当時のBaan部長よりも部員だった林宗儀氏であったことを,特筆しておきたい。
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