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特集 創刊20周年記念 第1部
器質性精神病に関する最近の研究—微細脳障害症状群および正常圧水頭症についての批判的考察
Advances in Psychiatry of Organic Psychoses: Critical Review on the Concept of "Minimal Brain Dysfunction" and "Normal Pressure Hydrocephalus"
原田 憲一
1
Kenichi Harada
1
1信州大学医学部精神医学教室
1Department of Psychiatry, Faculty of Medicine Shinshu University
pp.521-535
発行日 1979年5月15日
Published Date 1979/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202936
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まえがき
器質性精神病の領域で取り上げるべき最近の問題といえば,何よりもCTによる脳の形態的臨床検索や,局所血流量測定による脳の病態生理学的,生化学的検査をまず数えねばならないだろう。それは単にそれぞれ検査技術の進歩にすぎないにはちがいないのだが,その著しい精密さは器質性精神病の臨床研究の領域に重大な進展を引き起こす原動力となるにちがいない。これらの驚異的な技術を用いての精神医学的研究の成果が世に問われるのは,しかしこれからである。
器質精神病の個々の分野での研究としては,たとえば,Wieckの通過症状群という新しい概念,青斑核をめぐるせん妄とREM睡眠に関する知見,記憶障害の神経心理学的基盤についてのLhermitte一派の業績,老人精神障害をめぐる多くの精神病理学的,疫学的研究,ICUや人工透析など新しい身体医学技術の分野で生じる症状精神病の問題,などがあげられる。さらに器質性精神病の精神症状を人間学的に理解しようとする動き(人見)がみのがせないのと同時に,いわゆる内因性精神病の器質性基盤の探究(たとえば,分裂病の認知機能障害面の研究や,壁の切断症状群仮説など)という方向が,器質性精神病研究の両翼に連なる。
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