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Ⅰ.WHOの中期精神衛生プログラム(1975-1982)の概要
WHOの最近の活動について述べる場合に1975年から1982年にかけてのWHOの中期精神衛生プログラムの活動と題目について概観しておくことから始めたいと思う。その一部は既に加藤氏によって触れられているので,ここでは疾病分類や薬物依存,アルコール中毒など以外の問題についてくわしく述べてみたい。この中期計画の目的はWHOが各国のアルコールや薬物依存に関連したものも含む精神医学的,神経学的,社会精神医学的諸問題を予防し,ないしは減少させようとする努力に協力し,第二に精神衛生技術と知識を適切に利用することによって全般的保健サービスの有効性を増加させること,第三に社会的な機能や変化の精神衛生的側面の知識を増加させ,これらの活動の戦略を発展させることにあると言われている。そしてこれらの目的を達するための具体的方針としては次の事項が取り上げられている。各国や各地域更には世界レベルで精神衛生問題を取り扱うサービスや機関の間の協力関係を改善すること,計画立案者や保健サービス関係者に社会的,経済的ならびに環境的作用の精神衛生的な意味合いについての知識を殖やし,精神衛生プログラムに地域の関与を増加させる手段を確立すること,国の保健計画の統合部分として精神衛生プログラムを計画し組織化する方法を発展させること,精神衛生の問題を一般的ならびにプライマリ・ケアの中に取り入れ,精神衛生サービスと一般保健,社会福祉,教育その他のサービスとの間の協調を促進すること,精神衛生,精神医学,神経学,精神薬理学や行動科学の領域で得られる知識を国や地域や世界レベルでの優先的な問題に応用することを促進する方法や戦略を発展させること,また特に精神衛生サービスやその人的資源,健康管理の社会心理的な側面,各国のニードに関連した研究などの情報伝達を促進する機構を確立することなどである。
また更に精神衛生問題を取り扱う広範な保健関係者やその他の人々の意欲と能力を増加する戦略を発達させること,精神衛生管理における治療やその他の有効な方法を発達させ,精神衛生活動の機能を発達させる研究を奨励し助長すること,すなわちアルコールや薬物依存に関連したものを含む,精神医学的,神経学的,社会心理的問題の疫学および比較文化的側面,精神医学と神経学の臨床的ならびに生物学的側面,健康と健康管理の心理社会的側面,神経ならびに精神疾患に特に関連した廃疾の社会心理的側面に関係した方法と戦略などを研究することであるが,これらすべての努力の中で最高の優先権は各国自体の自立的な研究を遂行することに与えられる。また麻薬や向精神薬の国際的関連協約のもとでWHOに与えられた機能を遂行すること,アルコール消費や依存薬物の非医学的使用に関連した問題の統制,精神遅滞ならびにその他の不具者のリハビリテーションと地域社会への復帰に関連した活動および一般的社会経済的発展に関連した問題や生活の質的改善,例えば住宅や栄養等の改善活動における国連およびその専門機関と非政府諸機関との協力などがあげられる。
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