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I.はじめに
最近,多くの精神病院において精神分裂病患者の在宅医療,陳旧例の社会復帰の方法としての作業療法1),after careとしての就職退院2,3)などが行なわれるようになり,これまでの隔離や保護を目的とした精神科医療から脱皮し,一社会人として精神障害者をみなおし,その社会生活での治療を試みる努力がなされるようになってきた。したがってその治療方法は単に抗精神薬の服薬指導のみならず精神療法による接近,精神障害者の家族療法,保健所やソーシャル・ワーカーの協力による地域社会へのはたらきかけ,職場(職親)の精神衛生と精神障害者に対する理解を深めるようなはたらきがけが徐々ではあるが行なわれるようになってきた。しかし,現実には再発,再入院の繰り返しにより家族関係の破綻者,地域社会や職場から排斥される患者がいかに多く存在するかはいうまでもあるまい。しかもその最たる原因として,行政的,経済的,人的諸要因を含め,精神科医療の貧困さが指摘されるであろう。しかしながらこのような患者が存在する以上,微力ながらも医療を行なわなければならず,その方法も各人各様であるのが現状である。
われわれは陳旧性精神分裂病者(以下分裂病者とよぶ)を対象としたが,その中でも特に家庭に問題があり退院が困難である入院患者群と,退院したのち病院に社会復帰の援助を求めてきた外来患者群に対して積極的なアプローチをしてきた。すなわち,前者の入院群には「院内作業療法」や「外勤作業療法」,「住込み退院」などを行ない,また後者の外来群には「職場紹介」などを積極的に推進した。そしてこれらの,いわゆるafter careによって社会復帰を促進したり,再発を予防したりする方法を追究してきた。今回はこれらのうち,退院して就職していった患者の実態と経過について調べたので報告する。
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