とびら
最近ある講演会できいた話から
金子 光
pp.1
発行日 1961年7月15日
Published Date 1961/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911419
- 有料閲覧
- 文献概要
最近,ある講演会できいた話から考えて—
戦前といつてもずつと昔,明治時代の中国の話,当時は支那とよんでいた。1人の親孝行な少年が,長患いの父親のために,医者と質屋に通いくらし,いろいろと次々に難題を注文する医者に泣かされながら,それでも父親の病気を治したい一心からせつせと質屋通いをしていたが,父親はついに不帰の客となつてしまい,少年の手許にはうず高くつまれた質屋の通い帖だけが残つてしまつた。少年は「病気というものは何とひさんなものであろう。世の中から病気をなくしたらどれぐらい人間は幸福になれるかしれない。」また「自分はぜひ親切な医者になりたい,病人をいじめない本当に助け主の医者になろう」と決意し,日本留学の志をたて,希望がかなつて日本に渡り,東北大学の前身である仙台医学校に入学し,熱心に医学の勉強にはげんでいた。
Copyright © 1961, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.