動き
日本神経化学会の発展と現状—第1回から第19回に至るまで
柿本 泰男
1
Yasuo Kakimoto
1
1愛媛大学医学部精神神経科
1Dept. of Neuropsychiatry, Ehime University School of Medicine
pp.639-645
発行日 1977年6月15日
Published Date 1977/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202629
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I.はじめに
日本神経化学会の見聞記を依頼されてなかなか書きづらく,遂に正月をつぶさざるを得ないはめとなった。見聞記は少し傍観者的であることが望ましい。筆者にとってこの学会はそうはいかない。大学院学生の最終学年に第1回―当時神経化学懇談会として発足―が開かれ,今日に至るまでこの学会は筆者にとっては最も貴重な学問的交流というか1年間働き蓄積したものを一度に発散する場であった。毎年秋が来ると全国の先輩や同僚が1年の成果を持ち寄り,お互いに無遠慮な討議を交し,互いに人の研究が良かったことを喜び合いまた,つまらぬ研究をやったなとなぐさめたりして2日間を過ごすのが例年行事となって来た。このような仲間の仕事を見聞記で当たりさわりなく平均的に紹介してみても今さらそらぞらしいと笑われるだろう。それに過去数年は正直言って研究は全体的に継ぎ足しみたいなのが多く,力作に乏しかった。それが今年はもち直し始めた。現在は一つの過渡期にあると思われる。神経化学の研究者の層が急速に拡大し,つぎの若い層に研究の中心が移行する時期にさしかかっているように思われる。
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