動き
C. ブラント博士の講演を聞いて—自殺とその予防
稲村 博
1
Hiroshi Inamura
1
1筑波大学医学専門学群精神衛生学
1Dept. of Social Psychiatry, School of Medicine, University of Tsukuba
pp.871-874
発行日 1975年8月15日
Published Date 1975/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202361
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1974年10月19日(土),東京において,西ドイツの精神科医C. Brandt博士の講演会が開催された。これは,「自殺予防研究会」と,社会福祉法人「いのちの電話」の共催になるものであり,精神科医をはじめとする諸科の医師,医学研究者,心理学者,ケース・ワーカーなど,自殺問題に関心の深い多方面の参加を得た。博士の来日は,わが国最初の電話カウンセリング機関である「いのちの電話」の招聘によるものであり,同年8月に東京で同機関が主催した「国際電話カウセリング会議」に続く,同年二度目の国際的交流であった。博士は,西ドイツのドュッセルドルフ市で,25年間精神病院の運営に当っておられるほか,同市にある電話カウンセリング機関Telefon-seelsorgeの総括責任者でもある。また,西ドイツの電話カウンセリング協会の理事として,全ヨーロッパ的規模での,自殺予防活動と,その運営・指導にあたっておられる。当日の講演は,博士の実践正視の精神にいろどられているいっぽう,いかにもドイツ人らしい,重厚かつ精緻な,格調高い論理性に貫かれていて,彼国の伝統に改めて思いをいたさせるものであった。
以下,その概要を報告するとともに,ひき続き行われた討議の要点を紹介する。
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