Japanese
English
展望
頭部外傷の臨床
Psychiatric Aspects of Head Injury: A review
太田 幸雄
1,2
Yukio Ota
1,2
1大阪赤十字病院精神神経科
2京都大学医学部精神神経科
1Dept. of Neuropsychiatry, Osaka Red Cross Hospital
2Dept. of Neuropsychiatry, Kyoto University, School of Medicine
pp.820-838
発行日 1976年8月15日
Published Date 1976/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202513
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Ⅰ.まえがき
頭部外傷,特に精神科医の取り扱う後遺症患者には極めて雑多なものが含まれており,それは単に頭部外傷という外的偶然的な事象によって集められた雑然とした集団にすぎない。まず,戦傷と平和時の外傷civilian head injuryとで種々の条件が著しく異なる外,受傷の程度とか機制の差(ことに開放性外傷注1)と閉鎖性外傷の差),損傷の部位によって症状の種類と程度が変化するのみでなく,年齢などの条件94,124),心理的な問題,法律的な問題,社会的状況などによって状態像が著しく変化する29,75,231,240〜242)。こういう状況においては,個人個人についていわばmade to order的に診断や治療を行なう必要がある266)。そのために太田172〜177)は力動的な神経病学(例えばGoldstein63〜65))とKretschmer127)流の多元的な考察法とを組み合わせて診断と治療を行なうべきであるとし,その方法論を詳述した。
さて,頭部外傷の場合,何といっても中枢神経系に外力が働いたのであるから,常に器質的損傷の存在の可能性を念頭においておく必要がある。器質的病変が存在するにもかかわらずそれを認知しえなかった症例の報告もかなりある31,70,136,197,212,245)。注意深く診断すると,自律神経症状や神経症症状が前景に出ているものでも軽度の神経病学的症状がよく認められるという報告もある134)。
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