古典紹介 解説
—エルンスト・クレッチュマー著—外傷性脳衰弱における心因性妄想形成
飯田 真
pp.95-96
発行日 1976年1月15日
Published Date 1976/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202435
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E. Kretschmer(1888〜1964)の「人と業績」については,すでに多くの紹介があり,私1,2)自身もかつて別の所に書いたことがあるのでここでは繰り返さない。
彼がこの論文を発表した当時のドイツ精神医学界の状況は,荘大な精神医学の体系を確立したKraepelinの名声が次第に薄れ始め,Kraepelinに対するHocheの批判が引用されたり,Sternが精神医学的診断の可能性について論じたりしている頃であった(Rümke3))。Kretschmerは当時30歳の若さであり,Schwaben詩人学派といわれたGauppの教室の自由で繊細な雰囲気の下で,処女作「敏感性関係妄想」を始め,彼の天才的創造活動が花開きつつあった。この論文でもKraepelin体系,殊に単一診断学,疾患単位説に対して,敢然と挑戦を試みており,その若々しい情熱と自負が感じられる。本論文「外傷性脳衰弱における心因性妄想形成」は,彼が初めて多次元診断学の古典的図式を提示した歴史的意義を有する論文である。
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