巻頭言
作業療法の調査から
井上 正吾
1
1三重県立高茶屋病院
pp.1130-1131
発行日 1975年11月15日
Published Date 1975/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202391
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1.はじめに
金沢学会以来,精神神経学会は精神医療の反省と展望をメインテーマとして,その中で,薬物療法,精神病質,生活療法,作業療法,精神病理学などを論じ,従来からの精神医療のあり方を検討し反省し,出来得れば将来への展望をひらくべく努力を重ねている。しかし,精神医療を支えるものは,精神医学だけでなく更に,精神衛生法体制・健康保険体制などと,国の政治体制のあり方も重大なる関連がある。さらに,日本の医療の特色であるところの85%を私的医療機関にゆだねていること,したがって経営優先・経済優先となりやすいこと。また職員削減や労働過重などの悪条件が重なり,労働者としての人権意識は昂まらず,したがって患者の人権も尊重され難い。また拠って立つ精神医学の教育研究は,ほとんどが大学に委託され,その大学は臨床よりも研究を重視している。大学講座制は一時期反省期にあったが最近はまた復しつつあるかの観がある。
患者の人権尊重の機運は,精神科医師の反省,患者自治会や家族会の要請で,もりあがりつつあるが,いまだ与論として定着しきっていない感がある。
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