Japanese
English
とびら
作業療法士にのぞむもの
What is expected from the Occupational Therapist.
井上 正吾
1
Shogo INOUE
1
1三重県立高茶屋病院
pp.1-3
発行日 1968年12月9日
Published Date 1968/12/9
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518100156
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
私は精神科医であるので主として精神科の作業療法について述べるが,その大部分は身体的な作業療法の部門にもじゅうぶん応用されると考える。
現在,精神科病院に入院している患者さんは全国的にみて21万を越している。それらの患者さんに加えられる精神科としての治療には3つの柱がある。それは精神療法と薬物療法とこの作業療法である。
これらの3本の柱はおたがいに補いあってその効果をあげているが,作業療法には狭義の作業療法のほかに,日常の生活指導やレクリエーション療法,さらに社会復帰療法といわれているものが含まれていて実に幅の広いものである。しかしこれらの作業療法もシモンの時代からしだいに科学的に取り扱われるようになり,特にアメリカにおけるそれは,精神分析的な原理を導入し専門化してきた。また,それに従事する人それ自体が治療の道具となるという点で,まさに人間性豊かな治療法であるともいえる。しかも,この療法は心理学,教育学,社会学などから生理学,病理学,精神医学に至るまでの広範囲の知識と,さらになんらかの技術を通じての治療であるという点で,特殊技術とを必要とするし,これらはまた孤立しては効果が薄く,他の医療スタッフとの協力において,最大の効果が期待できるのが特徴である。
このように考える時,精神科作業療法に従事するものの責任の重さをいまさらのごとく痛感するのである。
Copyright © 1968, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.