巻頭言
病識について
菅又 淳
1
1東京都精神衛生センター
pp.894-895
発行日 1975年9月15日
Published Date 1975/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202363
- 有料閲覧
- 文献概要
精神病患者の治療やcareの上で,病識というものが限りなく重大な問題であることを,この頃痛感している。精神病理学の方面でも病識は重要なテーマで難かしい論議がなされているようであるが,practicalな臨床精神医学でも中心問題ともいうべき重要性を持っている。
私はかつて「地域精神衛生活動(あるいは地域精神医療)は患者の病識との戦いだと思います」とある高名な先輩に話したことがあるが,つまり次のようなことなのである。近代精神科医療がopen-door principleとか,外来中心の医療とかいう理念のもとに,入院隔離,自由拘束による従来の医療に対して進められてきているが,地域精神衛生活動はこの哲学の実践にその重要な部分を持っている。さてこれを現実に実践しようとすると,まず第一につき当るのが,患者の病識不足の壁である。
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.