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I.はじめに
Bergerが1929年に頭皮上から脳波を記録することに成功して以来,脳の各種疾患や病態と脳波との関係が追求されて,臨床脳波学は著しい発展をとげた。今日では臨床脳波に関するすぐれた著書が数多く出版されており,その枚挙にいとまがないほどである。しかしこのような状況の中にあって,今なお十分な解明がなされていない波形やパターンも少なくない。phantom spike and wavecomplexもまたその中の1つに数えられている。
ここでphantom spike and wave complexに関する研究の歴史を,本波形を中心に取り扱った報告をもとに概観してみる。この波が注目されるに至ったそもそもの発端は,1950年にWalter74)が小発作波型に似ているが,それより速くてしかもきわめて小型の棘徐波複合をphantom petit malとして記述したことに始まる。その後1955年にMarshall37)がwave and spike phantomと呼んで小論文を著わし,1957年にThomas68)がより詳細な報告を行っている。しかし,本格的な研究がなされるようになったのは1960年代も後半に入ってからのことで,このころに,Hughesら23)(1965),Tharp69)(1966),Silverman58)(1967),Thomasら71)(1968),Small59)(1968),Smallら60)(1968),Bennetら1)(1969)などがしだいに研究の成果を報告している。当時の研究は主としてphantom spike and wave complexの実態を明らかにしようとしてなされたもので,出現頻度とその性比,年齢分布,波形の特徴,賦活の影響,臨床症状との関係などが追求されている。この中でSmallのみは精神病患者を対象として臨床相関の研究を行った。1970年代に入ると,Olsonら46)(1970),Olsonら47)(1971),Milsteinら39)(1971)などの報告がみられ,ここではphantom spikeand wave complexと精神症状との関係を追求する動きがさかんになっている。
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