Japanese
English
研究と報告
慢性精神病者の心気症状に対するL-DOPAの効果
Effect of L-DOPA on the Hypochondriac Complaints of the Chronic Psychotics
浅野 聰明
1
,
野間 拓治
1
,
松田 清
1
,
池田 久男
2
,
大月 三郎
2
Toshiaki Asano
1
,
Takuji Noma
1
,
Kiyoshi Matsuda
1
,
Hisao Ikeda
2
,
Saburo Otsuki
2
1河田病院
2岡山大学医学部神経精神医学教室
1Kawada Hospital
2Dept. of Neurol. and Psychiat., Okayama Univ. School of Med.
pp.745-751
発行日 1973年7月15日
Published Date 1973/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202047
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
中枢神経系における近年の生化学的,薬理学的研究は,カテコールアミン動態が内因性精神病とかかわっていることを指摘している1)。すでにdopamineに関する研究から,dopamineの前駆物質であるL-DOPAがパーキンソン病および症状群の治療に導入され,多数の治験例が報告されているが,周知のとおり,その治療過程で患者の精神症状が改善または悪化することにも注目されてきた2)。またIngvarsson3),Matussekら4),Bunneyら5),によってうつ病治療にもL-DOPAが導入され,さらに最近では精神分裂病に対するL-DOPAの治験例が報告されている6〜10)。
われわれは,向精神薬により生じたパーキンソン症状に対するL-DOPAの有効性を検討する目的で,分裂病を主とする慢性精神病者を対象にL-DOPAを最高1日1200mg投与したところ,神経症状の改善はほとんど認められなかったが,心気症状が軽減ないし消失した。そこで改めて,心気症状が前面に出ている慢性精神病者17名を対象にL-DOPAを1日量900mg投与したところ,心気症状に対する効果は,著効4名,有効6名,やや有効5名,無効2名であった。さらにplacebo効果もあわせて検討した結果,慢性精神病者の心気症状に対してL-DOPAが有効であるとの結論を得たので報告する。
Copyright © 1973, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.