映画評
—指導:上出弘之・徐 世傑・石井 葉 監修:臺 弘—子どもの自閉症—その治療教育と行動研究
中川 四郎
1
1東京学芸大学特殊教育学
pp.208-209
発行日 1973年2月15日
Published Date 1973/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201991
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児童精神医学の臨床の中で,戦後世界的に最も関心を集め精力的に研究が行なわれた対象は,いわゆる「自閉症」であろう。わが国においても,1950年代の後半から現在まで,それは常に学会の中心課題であった。しかしその対象とされた児童の類型や概念は,この用語の普遍化とともに拡大し変化しており,雑多な状態の児童が,ときには自閉の名に相当しないような行動の異常までが,自閉症とされるような状況さえ作りだしている。
このことは,このような障害を持った児童の診断名の変遷にも現われている。1944年のKannerの早期幼児自閉症の命名から,それが児童分裂病と同義的に使用されていた時代,さらにAspergerの自閉性精神病質の導入から,幼児自閉症あるいは小児自閉症と呼ぶ時期を経て,ただ自閉症といわれるようになった。これは英米でも同様であって,最近はchildhood autismあるいは単にautismといわれる傾向がある。自閉症という言葉が疾患として把握されているのか,単なる症状あるいは症状群として用いられているのか,不明確な用語であるとして論議されたこともあり,これを避けるために自閉的な児童,自閉児(autistic child)という語を用いるべきであるとしている者もある。筆者は自閉性精神障害という言葉を提唱している。
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