Japanese
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研究と報告
Cyanamideによる飲酒嗜癖者の外来治療効果
The Therapeutic Effect of Cyanamide on the Alcoholic Addicts in Out-patient Clinic
有川 勝嘉
1
,
小鳥居 衷
1
,
向笠 寛
1
Katsuyoshi Arikawa
1
,
Makoto Kotorii
1
,
Hiroshi Mukasa
1
1久留米大学医学部精神神経科学教室
1Dept. of Neuropsychiatry, Kurume Univ. School of Med.
pp.219-227
発行日 1972年3月15日
Published Date 1972/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201863
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I.はじめに
飲酒嗜癖あるいは慢性アルコール中毒者が近年激増しているにもかかわらず,これら患者に対しては入院にさいして身体的中毒症状の治療は行なわれていても,慢性中毒の基盤をなす嗜癖に対する治療は効果的に行なわれていないのが現状であろう。嗜癖に対する治療が効果的でないかぎり患者はふたたび飲酒を試みる結果たちまち治療前のように大量飲酒をつづけるようになり,再入院を余儀なくされる破目におちいる。このような患者が入退院をくり返し,次第に人格の崩壊者として病院に沈澱していきつつあることも現実として見逃せない。これに対してわれわれは身体的・社会的にできるだけ酒害の軽微なうちにこれら飲酒嗜癖者を外来で治療する努力を重ねている。
すなわち,われわれは毎年全外来新患の約7%を占める飲酒嗜癖または慢性アルコール中毒者を取りあつかい1)12)27),何らかの形で抗酒剤Cyanamideを投与して外来治療を行なってきた。向笠がCyanamideの純正品を用いてその抗酒作用を確認し17),その臨床的応用をなす18)うちに種々の特殊な治療法があみだされ19)20),この治療の適応と限界も明らかになってきた。この特殊な治療法は症例にあわせて工夫され決して単一なものではないが,"節酒療法"という特異的な概念で貫かれている19)20)24)。われわれはこれらの外来治療の臨床的効果を過去4年間(昭和41〜44年)にわたり調査し,高い治療効果が毎年ほぼ同水準で持続していることがわかったのでその実態を報告し,この治療法の適応と限界あるいは酒害者に対する治療者の姿勢等についても若干の検討を加えてみたい。
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