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特集 社会変動と精神医学
家族変動と精神医学—家族社会学的考察
A Consideration on Changing Family and Clinical Psychiatry through Sociological Analysis of the Family
榎本 稔
1
Minoru Enomoto
1
1成増厚生病院
1Narimasu Kosei Mental Hospital
pp.1155-1162
発行日 1971年12月15日
Published Date 1971/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201831
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I.はじめに
社会は常に流動し,人々の生活を変えてゆく。敗戦国から経済大国へ,忠君愛国の家族制度から核家族のマイホーム主義へと,四半世紀のうちに日本の社会は大きく変動してきている。このような急激な社会変動は,生活様式や価値体系や精神構造を揺振って,さまざまな変化を与える。そしてこの変化がさらに社会に反映し,社会は変動する。めまぐるしく変わる社会状況に,Ogburn, W. F.(1866〜1959,アメリカの社会学者)の言う「文化的遅滞」がみられ,人々の心に種々の歪みが生ずる。遅まきながら,精神医学も社会変動に眼を向けねばならない。
折しも,本年8月,第4回(日本)家族社会学セミナーが開かれ,総合テーマは「社会変動と家族」であった。産業化,都市化によって,日本の社会に過密・過疎が生じ,人間は平均化され没個性的となり,人々は傷つきやすくなっている。家族成員の対話はマス・メディアの発達,マス・コミの氾濫によって減少し,表面的な接触に終わり,深い内面的な結びつきは稀薄となって離婚が増えている。核家族はもろく崩れやすい。教育年限は延長して種々の教育問題を生みだし,人口は老齢化して老人問題がクローズアップされてきている。さらに家族が死んで,老人が独り残されたとき,また父親が出稼ぎあるいは単身赴任して,長年妻子と別居している場合,これらを一つの家族単位と考えられるのか。家族は有機体的統一体なのか,単なる同志の集まりなのか。家族とは何か。将来,テクノロジーの発達により性別や遺伝のコントロール,試験管ベービーなどが想定されるが,それは家族をどう変えることになるのか等々が熱心に討議された。
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