特別論文 精神医学の基本問題—精神病と神経症の構造論の展望
第14章 パブロフの実験的神経症とクルト・シュナイダーの神経症異論
内村 祐之
1,2
1東京大学
2財団法人神経研究所
pp.856-865
発行日 1971年9月15日
Published Date 1971/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201797
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前章で紹介したクレッチュマーのヒステリー論の中核をなすものは,その症状の発生と形成とを系統発生史的に,また症状の固定を反射生理学的に説明しようとするものであった。ところで前章の末段でも取扱ったことだが,現代の臨床神経症学にとって,もう1つ重要な問題は,時代とともにヒステリーの臨床形態が変わりつつあるという事実に関連するものである。クレッチュマーによると,「……おおむね外方に向かって表出されていたものから内方に向かって,すなわち植物神経系の調節という領域に引っ込んでしまった」のであり,その結果,ヒステリーと他の種類の神経症との区別が不明瞭となって,ヒステリーや神経症の概念そのものの再検討が迫られる時代に入ったのである。
それゆえに本章の前半では,神経症発生論でクレッチュマーと多少の共通点をもつ生理学者パブロフの神経症論を,また後半では,純粋の臨床精神病理学の立場からするクルト・シュナイダーの異色のある神経症論を紹介することにしようと思う。この2つは互いに隔たった視野に立つ議論であるが,両者ともに基本問題としての重要性を持つものと考えるからである。
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