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展望
遅発性ヂスキネジア—諸外国における研究
Tardive Dyskinesia : Studies in Foreign Countries
風祭 元
1,2
Hajime Kazamatsuri
1,2
1東京大学医学部精神医学教室
2現:Boston State Hospital
1Dept. of Psychiatry, Faculty of Med., Univ. of Tokyo
pp.840-855
発行日 1971年9月15日
Published Date 1971/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201796
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遅発性ヂスキネジア(tardive dyskinesia)は,向精神薬(主としてneuroleptics)の長期間の治療の後に出現する不随意運動症状群である。
1.現在,欧米の精神病院の長期入院患者の10〜30%にみられるといわれている。
2.症状の中心は,口の周囲に限局する反覆常同的な不随意運動である。
3.通常,向精神薬療法開始後,数年後にはじめて出現し,向精神薬を中止しても消失せずに非可逆的に持続する。
4.高齢者や,脳器質障害の既往を持つ患者に出現しやすい傾向がある。
5.その発現機序は未だよく分っていないが,向精神薬の連用によってひきおこされた,脳,とくに基底核のdopamine代謝過程の異常(dopamine作動性の増加)が推定されている。
向精神薬の導入にともなう精神科領域の化学療法の発展は,精神医学の歴史に,新しい時代を画したといってよい。しかし,多くの患者が,向精神薬によって,社会復帰や,精神療法的・生活療法的働きかけが可能になった一方,本症状群のような非可逆的な神経系の後遺症が出現するという事実は,われわれすべての精神科医に精神医療における薬物治療の再検討の必要性を,つよく要請するものと考えられる。わが国においても,本症状群の実態の調査と,その予防・治療の対策の樹立が早急にのぞまれる。
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