Japanese
English
研究と報告
併設精神科のあり方
Psychiatric Service in General Hospital
吉田 登
1
,
河村 敏夫
1
Noboru Yoshida
1
,
Toshio Kawamura
1
1豊川市民病院精神科
1Dept. of Psychiatry, Toyokawa City Hospital
pp.817-822
発行日 1971年8月15日
Published Date 1971/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201793
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I.はじめに
鈴木1)によれば,英国では,1960年以来,精神科医療を一般身体医療に近づける政策がとられ,精神病院を小規模にし,第1級の一般病院に精神病床が併設された。その結果,ほとんどすべての種類の精神疾患の治療が併設精神科でも可能となり,地域社会と患者との近接化,地域住民の理解度の向上,精神医学と身体医学との密着化,医師と患者との人間関係の持続などの諸面ですばらしい効果をあげたので,1970年からは,地方の一般病院にも精神科が併設されようとしているという。
わが国では,従来,社会復帰は強調されても,精神科医療を一般身体医療に近づける動きは重視されず,精神科医療は一般身体医療から孤立し,特殊視されてきた。最近の地域精神医療の動きも,現実には(とくに地方においては)精神科医療を一層特殊にしているような感じがする。事のあるたびに,社会の精神障害者に対する偏見が問題にされ,精神衛生運動の強力な推進が叫ばれるが,精神科医療が医療の中でさえ孤立し,特殊視されているような状態で,社会の偏見を打破することが果して可能であろうか。患者を特殊扱いすることを避けて,一般身体医療と同じレベルで,その中に組みこまれて精神科医療を行ない,医療の中での差別を除くことが,社会の偏見を少なくし,患者の人権をおかすことを少なくすることになるのではなかろうか。その意味で併設精神科の役割は重要であり,近年,その数も増加しているが,その内容は病院のアクセサリー的なものであったり,病院の経営を安定させるための,いわゆる固定資産的なものであったりして,その機能を十分に発揮しえないものが多いのが実状である2)。
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