特別論文 精神医学の基本問題—精神病と神経症の構造論の展望
第12章 アンリ・エイの器質力動学説
内村 祐之
1,2
1東京大学
2財団法人神経研究所
pp.674-683
発行日 1971年7月15日
Published Date 1971/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201773
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精神医学における一元論と二元論
今まで述べてきたところからもわかるように,精神医学の基本問題ことに精神障害の発生と構造とに対しては,時代の嗜好により,研究者の傾向により,また関係科学分野の進歩の水準によって,種々異なる考え方があった。そしてこのような異なる意見の存在自体が,すべての専門家を納得させるような定説のないことを示すものでもあるのである。
精神医学が宿命として担うもの,そして各時代を通じて研究者間の議論の対象となった課題の1つは,身体と精神との相関の問題である。ことに精神障害の成立を,身体と精神とのいずれかの面から一元論的に把握すべきか,あるいはその両面から二元論的に理解すべきかの問題は,研究者によって大いに意見の分かれるところであった。20世紀初頭の脳病理学の進歩は,身体疾患ことに脳疾患の結果として精神病の発呈することを明らかにしたが,この分野でも,疾患自体と精神症状との相関関係の詳しい点に至っては,今日なお不明のことが多い。
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