巻頭言
病院精神医療の主体性を確立せよ
渡辺 栄市
1,2
1日本精神病院協会
2渡辺病院
pp.2-3
発行日 1971年1月15日
Published Date 1971/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201691
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私は今日,日本の精神病院の問題が社会に大きくとり上げられ,それが厳しい批判にせよ,ごうごうたる非難にせよ,あまりにもむごい暴露にせよ,論議の的になっていることを,むしろ当然という気持で受けとめている.どうしてもっと早く精神障害者の問題が日本では大きくとり上げられなかったのかと,私は四十年間の精神科医として甚だ不満であり心外であった.
私は一昨年のWHOのクラーク勧告も,日本人として面白くはなかったが,現在の日本の精神病院の実態を,ある程度は知っているつもりなので,極めて当然のことだと思った.そして,少数の優れた病院はあるにしても,一般的には欧米の水準からあまりにもおくれていることを残念に思い,なんとかして欧米文明国の水準までは到達したいものと念願し,私なりに昼夜をわかたず努力してきたつもりである.いったい今日,世界の大国と思われ,自らも思っている日本において,何故精神病院や精神障害者のみが,このような処遇を受けなければならないかについて,深い悲しみと同時に憤りを覚えていたのである.
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