特集 医療危機と精神科医—第6回日本精神病理・精神療法学会 討論集会をめぐって
臨床の場から
福井 東一
1
1初声荘病院
pp.117-119
発行日 1970年2月15日
Published Date 1970/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201576
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この春の日本精神神経学会以来,幾つもの学会が批判を受け,その批判が十分に消化される前に終わっていった。この一連の動きのなかにあって,この精神病理・精神療法学会でも幾つかの問題が提起され,討論され,そして問題が深められる前に時間切れとなっていったのである。
この学会でも,何ものかが動きはじめたのである。しかし動きはじめたそれが何であるかが明らかにされるにはもっと時間が必要だったのである。その何ものかに不安をいだく人達にとっては,この学会は不必要に荒れたにすぎなかったであろうし,その何ものかに多少なりとも関心をもつ人達にとっては,なにか物足りない学会であったに違いない。こういう私はこの学会を物足りなく感じた一人なのである。私が残念であるのは折角二つの立場からの意見が提出されたにもかかわらず、結局噛み合わないままに終わりを迎えてしまったということである。二つの意見が噛み合いさえすれば,その矛盾のなかから発展するものを十分に期待できたにもかかわらず,基本的段階においてすら共通の場を見つけることに成功しなかったのである。しかし考えてみればこの基本的段階である共通の場を求めることこそ最も困難な問題なのであり,それを目指しての討論集会であったともいえるのであろう。
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