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Ⅰ.緒言
1952年,DelayおよびDenikerによつてChlorpromazineが精神障害者の治療に導入されて以来,近年各種のphenothiazine系化合物が,その核に付属するハロゲンおよび側鎖を変化することにより,数々の新薬剤として登場してきた。ここに臨床効果を報告するFluphenazineもその一つで,化学名は1-(2-hydroxyethyl)-4-(3-(2-trifluorome-thyl-10-phenothiazinyl)-propyl)-piperazine dihydrochlorideであり,その構造式は図に示したが,Chlorpromazineの塩素をCF3 trifluoromethyl基で置換し,側鎖にPerphenazineと同じくpiperazine核を有するphenothiazine誘導体である。本剤の動物実験では,mg-potncyが強く,その効力はChlorpromazineの25倍であり,かつ,かかる活性の増加にもかかわらず,急性毒性が少ないとされている。Fluphenazineの臨床効果について,1959年,Ayd,Darling,Taylorらは,精神分裂病,抑うつ病などの精神疾患に使用して,優秀な新薬剤としての有効性を報告しており,一方Ernstはとくに不安-精神緊張症候群をもつ神経症,精神身体症などの外来通院患者に用い,ことに強い不安,苦悶感をいえるものに効果があり,その76.6%に著効を認めたと報告している。
今回われわれもこのFluphenazine(Sevinol)の試供品をアメリカンシェリング日本学術部より提供され,臨床的に使用する機会をえたので,その臨床経験および使用成績を報告する。
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