特集 医療危機と精神科医—第6回日本精神病理・精神療法学会 討論集会をめぐって
現代の“富める青年”は誰か
安永 浩
1
1東京大学医学部分院精神科
pp.120-121
発行日 1970年2月15日
Published Date 1970/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201577
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今回の問題提起の中核は医療政策の問題なのだが,結局そこまでは話がゆかず,学問や学会の体質,各人の意識を問い直す,という大きな迂路をとることになった。これは従来のいきさつからして,また事柄が社会全体の文明史的現象にかかわっている以上,やむをえないことだったろう。紙数も限られているし,私としては集会の個々のことでなく,ごく一般的な感想をしるすにとどめる。
まず「学問論」そのもののレベルでは,それほど立ち入って論じる必要もないだろう。どんなアプローチでも自由に試みられるべきは自明である。提起者もこのこと自体はわかっているのだと思う。その限りで指摘されたいくつかの批判は傾聴すべきものがあると思う。学会の体質にある偏向があったとすれば,除ける限りこれを切り捨てて,さっぱりしたいものである。問題は結局は,学問の主体たる個人の生き方の問題に帰着する。これだけならば完全に同意できる。
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