FORUM グローバルヘルスの現場力・Vol.5
自分のいる場とグローバルの場の重なり
後藤 あや
1
1福島県立医科大学総合科学教育研究センター
pp.1159-1162
発行日 2022年9月24日
Published Date 2022/9/24
DOI https://doi.org/10.32118/ayu282131159
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
国際保健の視点からみた日本の保健医療
産婦人科での初期研修後に公衆衛生学を学ぶため留学したとき,私と同じように産婦人科の研修医だったアメリカ人学生と話していて,私は処方したことのない経口避妊薬について,それを処方するのは研修医の仕事と彼女が言っていたのが印象的であった.その頃,リプロダクティブヘルスという,1994年に国連の国際人口開発会議(カイロ会議)で提唱された概念について学んだ.これは従来の母子保健をより広くした新しい概念として,「人間の生殖システム,その機能と過程のすべての側面において,単に疾病,障害がないというだけではなく,身体的,精神的,社会的に完全に良好な状態にあること」と定義される1).リプロダクティブヘルスは母子保健の中心となる周産期や生殖可能期のみならず,生涯の各ライフステージに関するさまざまな健康課題を含み,男性の関わりや社会的環境をも考慮するものである.自分のキャリアと重ねると,リプロダクティブヘルスの概念が提唱された1990年代に医学の基礎を学び,国際保健を学んだ留学時には上記の会話にでた経口避妊薬の日本での認可が話題になっていた.このような世界と日本の保健医療の違いに関心を持ち,恩師であるハーバード公衆衛生大学院のマイケル・ライシュ先生の指導の下で,日本における経口避妊薬の認可についてまとめたレポートがはじめて書いた論文になった2).
Copyright © 2022 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.