Japanese
English
研究と報告
刑法改正に関する私の意見 第1篇 責任能力(その2)—英国篇
My Opinions on the Reform of the Criminal Law
田村 幸雄
Yukio Tamura
pp.741-744
発行日 1967年10月15日
Published Date 1967/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201249
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
Ⅰ.M'Naghten Rule(M. N. R. と略記)
成立まで
英国で精神病が免責の理由として最初にとりあげたのは,Edward Ⅰ世(1272〜1307)時代といわれる。13世紀に,精神病者の定義を初めてしたひとりといわれるBractonは精神病者を精神や理性に欠けるところがあり,自己の行為に対する認識がなく,家畜と大差ない者としている。17世紀の初めごろまでは,精神病による免責は非常に厳格であつたようで,Alfred大王時代には,王を殺害したり,またはこれを企図する反逆罪は精神病者であつても免責されなかつた。
1)E. Coke 17世紀の初めBevery事件で,Cokeはつぎのごとく規定した。重罪行為や殺人は犯意(Mens rea)がなければ犯罪とすることができない。もし,ある人が理性を喪失し,人よりも動物に似てくれば,犯意をもつことができないので,有罪とすることができない。Cokeは正気を失つた人(Persons non compos mentis)をつぎの4つに分けている。(a)白痴または先天性精神薄弱,(b)完全な記憶をもつた人が天罰によつてこれを失つた人,(c)軽快時期のある精神病者(lunatics qui gaudet lucidis intervallis),(d)酩酊などのように自己の行為により正気を失つた人。
Copyright © 1967, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.