第4回精神医学懇話会 精神医学と行動科学
主題報告
行動現象の環境投影
平尾 武久
pp.628-635
発行日 1967年9月15日
Published Date 1967/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201234
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Ⅰ.個体行動特性の研究
生態とは本来生物と環境との相互活動を意味しており,主体環境系の自己運動として他の系の介入を許さぬものである。もし環境が観測の座標系と密着しておれば,個体行動の現象は主体が観測自体にはたらきかけるかたちとなり,座標系に対して展開する統計的現象として観測される。当然その統計量は座標系の観測基準をどうとるかによつて変化する。観測の座標系が環境と密着するというのは,一定単位を規定した座標系が環境の部分と対応し,またその逆が成立し,かつ座標系のなかでの量的取り扱いがそのまま環境のなかで再現しうることを意味する。
主体のもつ行動特性は,環境——座標系——の上に実現される変化する標本統計量の母集団の性質と考えることができよう。その意味で座標設定は,標本化の操作に該当する。座標の系を適当にとつて——それは環境を操作的に構成することを意味する——観測量の背景となる母集団の性質をうまく把握するのが実験の技術であり,その意味では操作的に構成された環境空間は一定の極限状況をmodelとして再現したものと考えることができる。
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