第4回精神医学懇話会 精神医学と行動科学
主題報告
精神医学における行動科学
臺 弘
1
1東大医学部精神神経科
pp.624-628
発行日 1967年9月15日
Published Date 1967/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201233
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I.はじめに
私はここで精神医学にとつて行動科学の必要性を説くつもりはない。むしろ精神医学の研究や医療の実践には行動科学的アプローチがすでに深く内在していたのであつて,それを意識的にとり出すことが課題を整理し方向を見定めるために必要だと思うのである。
そうはいつても,精神科医ならだれでも患者の行動に関心をもたないはずはないとか,Kraepelinの教科書にも患者の行動の精細な描写があるとか,患者のすることなすことすべて行動ではないか,などと論旨を拡げられてしまつては困る。それならなぜ精神医学は行動の研究の上に発展せず,現象学的精神病理学と深層心理学の上に築かれ,一方いちじるしく発達した基礎的な神経諸科学と精神医学との間には深いdichotomyが生じてしまつたのかを明らかにする必要があるだろう。
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