特集 心因をめぐる諸問題
第3回日本精神病理・精神療法学会シンポジウム
指定討論および演者回答
指定討論
黒丸 正四郎
1
1神戸大学
pp.417-419
発行日 1967年6月15日
Published Date 1967/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201207
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各演者のお話を承りまして感じましたことは,皆さんに共通してみられることが心因というものを「準備要因+心的体験=心因反応」といつたような,単純な因果論に対する否定であるということであります。私もこの点については同感であります。こういう意味から私には演者の方々に対して不満を申しあげるような材料がなく,むしろ感心いたしたようなしだいで,どうかすると,与党側にまわりそうであります。とくに下坂先生に対しましては青春期の食思不振症といつたようなものを単純に心因単位に分けずに,その症状発生の必然性を,了解心理学的に追求された態度には,私も非常に賛成であります。
このごろ,児童精神医学で問題になつております思春期の登校拒否症といわれている神経症なども,こういった考えかたでまいりますならば,子どもがただ学校に行くのを否定しているのだというような単純な因果論的な説明でなく,そこにはやはり小さいときからの成長過程のなかに含まれている生活史を考えるべきで,ちようど食思不振症が思春期の性的成熟に対する拒否を示しているのと同様,登校拒否症はこの年齢期における社会的成熟をかれが拒否しているのだと解してもいいかと思うのであります。
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