第3回精神医学懇話会 森田療法
指定討論
河村 高信
1
1栃木県立岡本台病院
pp.723-725
発行日 1966年9月15日
Published Date 1966/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201061
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私はさきほど池田先生が述べられた,症状を持続させるものについて,またそれと笠松先生が述べられた狭い意味の森田精神療法との関連を理論的に考察したいと思います。
私の立場は,いままで行なわれてきたように森田療法を精神分析の用語,あるいはその他の精神療法の用語で説明するのではなく,精神療法以外の分野で使つていることば,表現を使つて考察します。その基礎は記号論であります。森田療法は患者の記号活動をなおしていく技法であると私は考えます。患者の記号活動というのはどういうことかといいますと,患者は自分の身体状態,あるいは精神状態(記号)について,それを病的である,あるいは異常であるというふうに考えております。これを患者が記号判断していると私は考えます。そして,その記号判断が続いたために不安がたかまり,それをなくそうという処置を患者が始めます。しかし,いくら処置をしてもよくならないので病気であるという記号判断がますます強まり,処置すればするほど記号判断が強まる。つまり,いちばん初めの記号判断をもつたときにはそれほど強い確信をもつていなかつたのが,病的と考えているものを取り去ろうとする経験を何回も繰り返している間に,その記号判断を確信的なものにしていく。森田療法は,このような患者がいままでとつてきた記号判断を強化する,より正確に述べるならば記号判断に関する確信度を強めていくような処置を禁止させ,それを弱化させるような方法をとらせる実験である,このように私は解釈しています。
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