回顧と経験 わが歩みし精神医学の道・11
3人の人物—長与又郎・清野謙次・大川周明
内村 祐之
1,2
1東京大学
2日本学士院
pp.376-383
発行日 1967年5月15日
Published Date 1967/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201201
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東京大学に赴任して,最初に手がけた研究が,病理学の長与又郎教授らと共同で発表した,傑出人脳の研究であつたことは,さきに述べたが,私は,この長与さんを,私の最も敬愛する先輩の1人であり,かつ,わが国の医学界が生んだ最も卓越した人物の1人であつたと思うので,ここで,いささか長与さんについて語りたいと思う。
長与さんは,昭和9年から13年まで,東京帝国大学の総長をつとめたが,あたかもこの期間は,昭和4,5年来,抬頭して来た軍部勢力が,昭和11年の2・26事件によつても反省の色を見せず,それのみか,軍部に引きずられた政治当局は,海外における積極政策を押し進め,国内に非常時の危機感をあおつて,挙国一致の態勢を強要した時代であつた。
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