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特集 精神分裂病の診断基準—とくに“Praecoxgefühl”について
第63回日本精神神経学会総会シンポジウム
Praecoxgefuhlの成立状況
Von der Situation beim Auftreten des Praecoxgefuhls
荻野 恒一
1
Koichi Ogino
1
1南山大学
1Nanzan Univ.
pp.94-98
発行日 1967年2月15日
Published Date 1967/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201148
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Ⅰ.Praecoxgefuhlと分裂病症状
たしかにわれわれは,精神医学的臨床経験をかさねるにしたがつて,分裂病者に相対した瞬間に,かれが分裂病であることを直観するようになつてくる。そしてこの直観の背後に,一定の分裂病概念が存することは疑いない。たとえば定型的な破瓜病の場合,これが,なにか深い人格障害,Bleuler, E. が内閉と分裂と規定し,Minkowski, E. が「現実との生命的接触の消失」と規定し,Jaspers, K. がProzessとよんだような人格崩壊の過程にもとづくものらしいことを,われわれが暗々裏に認めていて,初めて「これは分裂病くさい」という感じ,すなわちPraecoxgefühlを感ずるようになつてきたのであろう。さらにみずからの臨床経験をかえりみるとき,急性分裂病者に面接したときにでも,われわれはしばしば,ほとんど直観的に,病者が言語性幻聴,被害妄想など豊富な分裂病的主観的症状を有していること,一言にしてZuttのStandverlustの状況にあることを感じとりこの直観にもとついて問診(現象学的記述的態度)を行なうとき,患者は,初心者が聞き出しえなかつたような豊富な分裂病的体験内容を述べてくれることもまれではない。それゆえわれわれは,井上の述べたように1),破瓜型分裂病とはべつの幻覚妄想型分裂病のPraecoxgefühlの存することをも認めていいと思う。
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