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特集 精神分裂病の診断基準—とくに“Praecoxgefühl”について
第63回日本精神神経学会総会シンポジウム
精神分裂病の「硬さ」と「冷たさ」について
Ueber die "Steifigkeit" and die "Kaelte" der Schizophrenien
石川 清
1
Kiyoshi Ishikawa
1
1東京大学医学部精神医学教室
1Neuro-psychiatrische Abteilung, Fakultaet der Medizin, Staatliche Universitaet Tokio
pp.90-94
発行日 1967年2月15日
Published Date 1967/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201147
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I.はじめに
分裂病の精神像において,とくに硬さと冷たさは,その早期発見のためにたいせつであるが,さらにまた長い経過をたどつて容易に快方に向かわない患者ではもちろんのこと,良好な寛解状態に達した患者においても,程度の差はあつても,しばしば出現する所見である。それは病者につきまとつている。
たとえば大学生について,入学時の短時間面接を行なつていて,学生の表情や話しかたのなかに,警戒や緊張とはべつな,刃のひらめきのようなものが瞬間的に感じとられ,あるいはその立居,ふるまいや挨拶のしかたのなかに,棒のような印象を受けとりながら,その他にとりたてて云々するほどの所見がないままに,暫定診断をためらつてしまつたのが,1,2年の後に立派な分裂病に発展してしまうことは,そうまれではない。そしてこれらの症例は,あらためて既往歴を精査してみると,しばしば入学の時点以前から,日常の行動や生活態度にすでにかなりはつきりした異常性を示していたことが判明する。あるいは妄想型の分裂病者などで,入院させると意外に早く諸症状が取れて,言動もまとまり,院内生活への適応性も増加してくるが,いざ退院となると,社会復帰についていろいろと配慮するにもかかわらず,まもなく悪化してしまい,入・退院をくりかえしたり,自宅に閉居しがちな患者で,病勢の激しい時期と寛解時を貫いて,この硬さと冷たさだけが変わりなくつづいている場合もある。
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