特集 薬物と精神療法
第2回日本精神病理・精神療法学会シンポジウム
指定討論
下坂 幸三
1
1順天堂大医学部精神科
pp.453-455
発行日 1966年6月15日
Published Date 1966/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201013
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演者の講演のなかでは,薬物精神療法がその眼目をなしていると恩われますので,このことについて討論いたしたいと存じます。
西園先生は薬は精神療法を促進するものだとして,積極的に併用する立場をとられるといわれます。しかし実情はかならずしもこのような明瞭な自覚をもつて薬物が投与されてはいません。薬で煙幕を張る,薬でときをかせぐ,薬を仲介にしてなんとか通院だけはつづけてもらおうとするといつた,あまり立派とはいえない動機から薬物を与えることも確かにある。しかしこのような動機も,いちがいに悪いとすることはできないようです。たとえば私はある神経症者に対して,こちらがくたびれて治療意欲を失いかけたとき,薬にしばらく肩代わりをしてもらい,こちらの態勢を整えなおして,ふたたび意欲的に精神療法をすすめることができたこともあります。
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