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特集 薬物と精神療法
第2回日本精神病理・精神療法学会シンポジウム
薬物と精神療法—統合的接近
Drug and Psychotherapy: A Synthetic Approach
西園 昌久
1
M. Nishizono
1
1九州大学医学部神経精神医学教室
1Dept. of Neuropsychiat., School of Med., Kyushu Univ.
pp.448-453
発行日 1966年6月15日
Published Date 1966/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201012
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I.はじめに
〈薬物と精神療法〉というテーマがとりあげられたのはつぎの2つのことを明らかにする目的によるものであろう。第1には,こんにちの精神科治療に欠くことができないとさえいわれる向精神薬の出現によつて,精神科医がどのような洞察を得たか,すなわち,精神科医,ことに精神療法医が向精神薬にどのような態度をとつているかということ。第2には,ある場合には盲目的にさえなされている向精神薬療法に対する反省,ないしは,薬物それ自身の作用の限界を明らかにすることであろう。要するに,薬物療法と精神療法との位置づけを明らかにすることであろう。
従来,精神科領域の治療に関する精神科医の態度には極端に相違する2つのものがあつた。精神障害の身体因を支持する人たちは,身体療法の有効性を信じ,精神療法を正しく評価しなかつた。他方,心因を重視する人たちは精神療法のみに関心をもち,身体療法をかえりみなかつた。両派の意見の相違は,徹底的なもので妥協の余地のないものであつた。この傾向はこんにちの薬物療法に対する態度にも見られる。すなわち,向精神薬に対する精神科医の態度には,薬物がもたらした客観的事実ばかりではなく,学派のちがい,医師の佃人的問題を含めた精神科医自身の治療哲学といえるものが関与しているようである。
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