Japanese
English
特集 精神分裂病の家族研究
精神分裂病者の家族の臨床的類型化のこころみ
Toward a Clinical Classification of the Families of Schizophrenics
藤縄 昭
1
A. Fujinawa
1
1京都大学医学部精神医学教室
1Dept. of Neuropsychiat., School of Med., Kyoto Univ.
pp.272-276
発行日 1966年4月15日
Published Date 1966/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200984
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
Ⅰ.
こんにち,精神分裂病(以下分裂病と略す)の病因をその病者の生育した家族内人間関係に求めようとする傾向が見られるが,かかる社会因(家族因)的研究が分裂病の病因論をどの程度まで解明しうるものであるかどうかという問題はべつとして,分裂病者の発病準備状況をかなり明らかにし,また病者の理解に新たな地平をひらいてきたことは事実である。私はかつて分裂病者の生活史を,その家庭全体の歴史(家庭史)のなかでとらえようとこころみ,病者が家庭内で孤立化していく様相を類型的に記述した1)。そこでは病者から出発して,家族状況のなかで分裂病発病にいたる準備状態の形成をみいだそうとしたのであつたが,このたびは考察の方向を逆転して,子どもが分裂病者となつたときに,家族には,おもに両親にはいつたいいかなることが起こるのであろうかという問題を追求しようと思う。
かかる研究方向の報告でこんにちまでに知られたものに,Alanen2),K. Ernst3),Th. Lidzら4)およびJ. Willi5)の研究がある。Th. Lidzらは分裂病者の親の多くがその子の発病の責任を他方の親の拒否的態度におしつけ,また親たちは罪責感をいだいているために,医師や病院に対し反抗的になることがいかに多いかということを指摘した。Williは子どもの分裂病発病によつて両親の多くに精神身体疾患とかうつ病の徴候が現われ,またすべての親が罪責感をもち,その罪責感から開放されるために,入院とか治療および医師などに対する病者の抵抗を,親たちも同じように示すことがあるという。
Copyright © 1966, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.