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I.序言
こんにちの病院精神医学では精神分裂病者のリハビリテーションという課題がしばしば論議されるようになつてきたが,この種の努力がわれわれ精神科医の治療的実践のなかで,いかなる意味方向をもつているのであるか,とくに精神療法との関連において考察してみようとするこころみが,この小論の目的である。
ところが精神医学におけるリハビリテーションという言葉の定義は現在なお明確にされていないようである。Gastergerらは古くから用いられた社会的寛解という概念に代わるものとして「精神的社会復帰リハビリテーション」という概念をとりあげ,非常に広義に—こんにちまでの精神医学的諸治療も含めて—リハビリテーション療法(Rehabilitationstherapie)という用語を使つている。しかし一般には,とくにわが国では,医学的諸治療は別として,アフター・ケアー,職業の指導・斡旋などを行なう社会運動的方策について用いられており,その努力は精神的欠陥のある病者を「個々の症状にあまりこだわらず,人間存在として全体的に再教育するというところをねらい(江副)」,そして彼らの「社会的適応と経済的独立とを支持するプロセスである(小林)」といわれている。より具体的にいえばこんにちまでの精神医学的諸治療によつて社会に復帰させることのできなかつた病者に,なんらかの新しい手段を講ずることによつて社会復帰を可能にしようとする活動,井上の言葉によれば「精神医学的治療の諦められたところからリハビリテーションが始まる」という,そういつた意味では医学をこえた,リハビリテーション療法というよりも,むしろリハビリテーション活動といつたほうが適切に思われる一種の社会運動に似た努力を意味しているようである。
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