Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.序
現在非行児あるいは問題児に関する研究は,医学,心理学,社会学などの立場から活発に行なわれている。従来より非行児として一括されている者のなかに性格異常,知能障害,種々の神経学的異常を示す者が比較的多く,その点より古くはLombross, C. の唱えたdelinquente nato(生来性犯人)の学説を初め精神生物学的見地よりする業績はこんにちまで多数にのぼつている。非行児の脳波的研究も1937年のSolomon, JasperおよびBradley1),らの研究を初め活発に行なわれ,異常脳波の出現率が正常対照群に比しかなり高率を示すことがあげられ,脳成熟遅延あるいは,てんかん性異常と非行とを関係づけたり2),前頭部あるいは後頭部徐波と非行児の性格との関係を論じたり3),また異常脳波が,間脳あるいは上部脳幹部の機能異常を示唆するものが多いところからそれらの部位と非行性とを関係づけようとするこころみ4)もあるがまだ結論を出すまでにいたつていない。
一方これら非行児に対する処遇は環境の改善,教護人との共同生活による適応調整への努力,また最近脚光をあびてきた力動的精神医学に基礎をおき,深層心理学的,発達史的に児童を理解し,その非行あるいは異常行動の成立過程をdynamicに理解し,児童の人間関係を正常化せしめようとする努力などが行なわれている。しかし非行発現の要因は遺伝,身体生理,知能などを含む生物学的素因と,児童の人間関係とくに親子関係を主とする環境条件との相互作用として生ずるものであり,脳波所見を含む身体的な基底をなすものに対する薬物投与,手術などの処置と相まつてその効果はいつそう輝かしいものになることと思われる。
Copyright © 1965, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.