研究・調査・報告
妊婦喫煙が児におよぼす影響について
石黒 達也
1
,
天崎 寿夫
1
,
松本 治朗
1
1滋賀医科大学産科学婦人科学教室
pp.680-683
発行日 1981年9月25日
Published Date 1981/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205901
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1.はじめに
1957年Simpson1)は,カリフォルニア州の3病院において喫煙妊婦から生まれた児の疫学調査を行ない,喫煙妊婦には低体重児の出生率が高いことを報告した。妊婦に対する喫煙効果はそれまでにも,Sontag and Wallace2),Campbell3),Essenberg et al. 4)等によって注目されていたが,本問題に関する本格的な調査は,Simpsonの発表を蒿矢とする。そして,Simpsonの報告以後,妊婦喫煙に関する疫学調査がアメリカ合衆国,イギリスを中心に多数行なわれ,喫煙が妊婦・胎児に及ぼす影響についてさまざまな論議がなされてきた。
現在までに発表されてきた報告の多くは,妊婦喫煙が流早産や死産を促進し,胎児の発育障害の原因になるとみなしている。これに対し,胎児の発育が妊婦の喫煙に影響されることはないという報告も多数ある。なかでもYerushalmy5,6)は,胎児の発育が妊婦の喫煙に原因するのではなくて,喫煙する女性の生活態度そのものに問題があると指摘し,Goldsteinら7,8)と激しい論議を交した。Yerushalmyが不幸にも死亡したため,この論議は解決されないままで残されたことになっているが,現在の認識は「従来の医学調査によると,妊婦の喫煙は児の発育にマイナスに作用する可能性がある。
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