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「精神分裂病者の自殺への討論」にこたえて
The Answer to "Disccusion on Suicide of Schizophrenia"
梶谷 哲男
1
T. Kajitani
1
1中央鉄道病院神経科
1Dept. of Neurol. & Psychiat., Central Hospital of J. N. R.
pp.929-931
発行日 1965年10月15日
Published Date 1965/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200919
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私は「分裂病者の自殺」という小論において,分裂病者(以下病者と略す)の自殺心性をできるだけ了解しようとし,とりあえず病識との関係を手がかりに選んだ。その結果,病者の自殺のなかにも了解可能なものがあり,これを一括して偽似自殺としてはならないこと,また病識があまりにも鮮やかな場合は自殺の危険性の多いことを述べた。また人格にある程度統合性がありながら病識のない病者の自殺において,病態のなかに主体の能動的なはたらきを見いだす場合,なぜその病態に圧倒されて自殺に追いやられるかを問いかけながら,結局それらの多くは,病態によつて直接自殺行為に追いこまれるのではなく,病によつても救いえなかつた不安,つまり防衛の閾をこえた破局的事態があらかじめそこにあつたのではないかと考えた。そしてこの場合,死への不安が,不安による死へと転換された人間存在の特殊性に注目した。
これに対して,斯界の権威の一人である大原氏より討論をいただいたのは光栄であり,また大いに反省の機会ともなつた。しかし,立場の相違,細部における意見のくい違いのほか,全般的にはやや討議が枝葉にはしり,上記の私の主題からずれているという不満を感ぜざるをえなかつた。それというのも,私が小論のはしがきにおいて氏の考えかたをいくらか批判していたので,自然に討議の中心がそこにおかれざるをえなかつたという事情もあつたであろう。
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