Japanese
English
研究と報告
いわゆる産後精神病の臨床的研究—I.統計的研究
Clinical Studies on Postpartum Mental Illness.: Ⅰ.Statistic Investigation
加藤 誉里子
1
Y. Kato
1
1京都大学医学部精神医学教室
1Dept. of Psychiatry, Kyoto Univ.
pp.251-256
発行日 1965年3月15日
Published Date 1965/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200827
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I.序論
すでにヒポクラテス「流行病Ⅰ,Ⅲ」に産後ならびに流産後,悪感発熱をもつて発病し,不眠・不穏状態におちいり多くはせん妄状態などの意識障害をきたし,ついには死にいたる症例が9例記載されている。これらの症例は現在の知識からは,産褥熱による症候性精神病と考えられる。近くは1850年代にEsquirolが産後発病する精神疾患が必ずしも一疾患単位を形成するものではなく,nonpuerperalな他の精神疾患にも見られる病像を呈することを指摘した。1857年,Marcéはこの疾患の原因を,素質,とくに遺伝負因と,出血,授乳,疲労,年齢など出産時の誘因とに求め,約1/3に遺伝負因の認められることを述べている。その後とくに消毒法の発達に伴い,産褥熱のごとき純粋に症候性精神病と考えられるものはしだいに減少し,むしろ内因性精神病類似の病像を示すものが産後精神病の大部分を占めるようになつてきた。またKraepelin以来精神病学が体系化されるにつれて産後発病する精神疾患群もその病像に応じ,分裂病,躁うつ病,利軽症などいずれかの疾患分類にいれられて,あえて特殊な類型として扱われなくなりつつあつた。しかしなおJacobsは産後精神病を特殊な疾患単位とみなしているわけではないが,その一つの特色としてその大部分に"Organic reaction type"の様相が見られることをあげている。すなわちかれはそれらを単純に分裂病あるいは躁うつ病とするには,その病像に,"distressed perplexity"が強く見られ器質性の色彩をそなえている点で問題があることを強調している。
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